2019年9月1日日曜日

8月の記憶


クルーズ船でゆっくりと太田川をのぼり、次第に原爆ドームが
姿を現してくると重苦しさで言葉を失いました。

私が広島を訪れたのは5年前の8月5日、平和記念式典が
行われる前日でした。船首がゆっくりと向きを変え、下船場に
近づくとその先には宗教団体が打ち鳴らす重く畳み掛けるような
団扇太鼓の音や、女性合唱団の清らかな歌が響き渡って異様な
ほどに緊張感のある空気が漂っていました。

蝉が休みなく重なり合って鳴いている道をゆっくりと歩きながら、
一瞬にしてすべての音が消えた時を想い胸が張り裂けそうに
なります。瓦礫に記憶された事実を淡々と語る広島の方の深い
悲しみや絶望を想うとやり切れない思いです。

鮮明に記憶された8月です。